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税務

法人成りは今がチャンス!?(不動産賃貸業編)

個人で不動産賃貸業を営む場合、毎年の所得税や住民税の負担に悩まれている人も多いのではないでしょうか。

そのような場合には法人成りもひとつの選択肢ではありますが、実行すべきかどうかの判断は容易ではありません。

そこで今回は不動産所得者の法人成りについて、メリット・デメリットを中心に解説します。

 

  1. 法人成りを検討すべきケース

不動産賃貸事業を営むケースでは、個人事業主の場合には所得税、法人の場合には法人税が課税されます。

所得税に関しては、所得金額の増加とともに所得税率も5~45%の範囲内で上昇する「超過累進税率」が適用されますが、中小企業の法人税については所得800万円までは15%、それを超える部分には23.2%とシンプルな2段階構造となっています。

したがって不動産所得が増加し、適用される所得税率が上昇するほど、法人成りが節税へと繋がる可能性も高まることとなります。

 

また不動産オーナーである個人が死亡した場合には、所有する不動産も相続財産となります。

相続税計算に関しては保有する不動産の価値や他の相続財産の状況によって異なりますが、生前のうちに所有不動産を法人名義へ変更することで相続税対策へと繋がるケースもあります。

 

これらのように、個人に課税される所得税や相続税の負担が重い場合には、法人成りによって節税対策を行うことも検討の余地があるでしょう。

 

  1. 法人成りのメリット

不動産所得者が法人成りするメリットとしては、以下が挙げられます。

 

  • 所得税と法人税の税率差を活用した節税
  • 個人の所得をコントロールしやすい
  • 事業規模にかかわらず家族への給与を支払うことができる
  • 消費税の免税期間を活用できる
  • 相続対策になる

 

まず①に関しては、先述のとおり、超過累進税率が適用される所得税においては課税所得が増加することで適用税率が上昇するため、法人成りによって税率を引き下げることが可能です。

また個人の場合、不動産の取得から5年以内に譲渡することで譲渡所得として30%の所得税が課税されますが、法人の場合にはこのような制限はありません。

したがって物件の売り時を逃さない効果も期待できるでしょう。

 

法人成りすることで自らに対して役員報酬を支払うこともできます。

役員報酬は給与所得として所得税の課税対象となりますが、自ら報酬額を決めることができるため、所得のコントロールがしやすくなります。

さらに個人の場合、「5棟10室基準」と呼ばれる事業的規模でなければ生計を一にする親族への給与を経費計上できませんが、法人の場合には規模による制限はないため、小規模でも実働分に対する給与支給が可能となります。

 

個人事業主として消費税の課税事業者に該当する場合には、法人成りすることによって原則2年間の免税期間を活用することもできます。

ただし2023年10月より開始するインボイス制度によって免税事業者のメリットは無くなるため、免税期間を活用する場合にはお早めにご検討ください。

 

そして譲渡や現物出資などによって不動産の名義を個人から法人へ移すことで、不動産が個人の相続財産から外れるため、相続対策として活用できるケースもあります。

なお設立した法人の株式や、不動産譲渡によって得たキャッシュや債権に関しても相続財産となるため、株価対策や生前贈与の活用も並行して行うことが一般的です。

 

  1. 法人成りのデメリット

一方で法人成りすることによって起こりうるデメリットについては以下のとおりです。

 

  • 社会保険の加入義務が生じる
  • 決算手続きが煩雑
  • 税務調査の対象となりやすい

 

まずは法人成りすることで社会保険への加入義務が生じます。

ただし役員報酬の設定額によっては、不動産所得者としての国民健康保険料よりも負担が軽くなるケースも考えられるため、デメリットにはならないケースもあるでしょう。

 

また法人成りによって決算手続きが必要となるため、個人の確定申告に比べて申告手続きが煩雑になります。

さらに法人化することで、一般的に税務調査に入られるリスクも高まります。

 

  1. 実務上のポイント

不動産所得者が法人成りを行う場合には、個人名義の不動産を設立した法人へ移す必要があります。

その場合には「譲渡」や「現物出資」、「贈与」などの方法が挙げられますが、いずれの場合にも元々の所有者である個人に所得税が発生する可能性があります。

 

時の経過に伴って老朽化し、資産価値が低下する建物と異なり、土地に関しては減価しない資産であるため、法人へ名義変更するにあたって個人側で所得税が発生するリスクが高くなります。

また年金を受給している場合には、不動産のすべてを法人へ移し、役員報酬として受け取ることで年金受給額が減少してしまうケースも考えられます。

 

そのため土地建物を所有している場合には、土地に関しては個人名義のまま残し、建物のみ法人へ譲渡することで、法人から個人へ地代を支払う方法も検討の余地があるでしょう。

そのような場合においては、「土地の無償返還に関する届け出」を行い、借地権課税を合法的に回避することも可能です。

 

(まとめ)

今回は不動産所得者の法人成りについて解説しました。

個人の持つ不動産に関しては、所得税や住民税、相続税など複数の税金に絡む複雑な内容であり、法人成りによってさらに難易度は高まります。

そのためむやみに行動に移すのではなく、税理士などの専門家に相談してから実行することをお勧めします。

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