地域の特産品を楽しみながら節税対策としても活用できるため、ふるさと納税制度の利用者は年々増加しています。しかし制度の仕組みを正しく理解していないと、知らないうちに損をしてしまっているケースも少なくありません。
今回はふるさと納税制度について解説します。
- ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、各個人が応援したい自治体に対して寄付を行うための制度であり、寄付額に応じて各自治体が用意したお礼の品(返礼品)を受け取ることができます。
なお「ふるさと納税」という名称ではありますが、自分の故郷以外の自治体へ寄付することも可能です。
またふるさと納税を行うことで、返礼品だけでなく節税効果も期待できるのです。
□節税の仕組み
ふるさと納税制度を活用し、自治体へ寄付を行った場合、その寄付額に基づく控除額を所得税や住民税から差し引くことができます。
たとえば50,000円の寄付を行った場合には、自己負担額の2,000円を差し引いた残額48,000円分の税金が減少します。
さらに寄付した自治体からは返礼品がもらえるため、その返礼品の価値が自己負担額2,000円よりも高ければメリットが生ずることとなるのです。
なお寄付によって受け取ることができる返礼品については、2019年6月に法改正がなされ、寄付額の3割以下の調達額とすることが義務付けられています。
したがって50,000円の寄付額であれば15,000円程度の返礼品となるため、2,000円の自己負担額で15,000円相当の返礼品を受け取ることとなります。
□限度額の計算方法
ふるさと納税によって控除できる税額については、所得状況に応じて計算される「控除限度額」が上限となります。課税所得が大きい人ほど控除限度額は高くなり、より多くの寄付が可能となります。
具体的な控除限度額の計算については、以下の算式によって求めることができます。
◆計算式:控除限度額=個人住民税所得割×20%÷(90%-所得税率×1.021)+2,000円
年収400万円の独身者や共働きであれば43,000円程度、年収700万円で配偶者と高校生の子ども1人を扶養する場合には77,000円程度が控除限度額の目安となります。
なおふるさと納税のポータルサイトからシミュレーションを行うことが可能であるため、ご自身の所得状況に応じた限度額を算出してください。
- 申告手続き
ふるさと納税による節税対策を行う場合には、所得控除や税額控除を受けるための手続きが必要です。
具体的には「確定申告」と「ワンストップ特例制度」のいずれかの方法を選択します。
確定申告の場合には、申告書に寄附金受領証明書を添付し、翌年3月15日までに税務署へ提出してください。
なお2021年度の確定申告より、国税庁が指定した特定事業者(「さとふる」や「ふるなび」など)のポータルサイトを通じて寄付を行った場合には、受領証明書の代わりに各サイトからダウンロードしたXML形式のデータ添付が認められるなど、手続きの簡略化が可能となりました。
またワンストップ特例制度は、年間の寄付先が5件未満の場合に利用でき、確定申告しなくても住民税から税額控除が可能となる制度です。ワンストップ特例制度を行うためには、翌年1月10日までに各自治体へ申請書を提出する必要があります。
なお確定申告とワンストップ特例は併用できず、確定申告を行う際にはワンストップ特例を選択した寄付分も含めて改めて申告しなければならないためご注意ください。
- 年末の寄付には注意が必要
ふるさと納税では、1月1日から12月31日までの1年間に行った寄付がその年度の所得税や住民税から控除されます。具体的には受領証明書に記載される「受領日」によって判定しますが、以下の支払方法によって受領日の基準が異なります。
・クレジットカード:決済完了日
・銀行振込、払込取扱票:指定口座に支払った日
・現金書留:各自治体が受領した日
支払方法によってはタイムラグが生ずるリスクもあるため、年末ギリギリではなく、スケジュールに余裕を持って早めに対応してください。
(まとめ)
今回はふるさと納税制度について解説しました。
節税効果を引き出すためには、正確な控除限度額計算と確実な申告手続きが必要不可欠です。
今回解説した内容を踏まえ、効果的なふるさと納税を行いましょう。