2022年1月から電子帳簿保存法が改正され、多くの事業者に影響が及ぶものと考えられます。特に請求書をPDFデータなどによってやりとりする場合やインターネットショッピングを利用した場合には、その取引記録を紙媒体で保存することが認められません。
今回は電子帳簿保存法改正の内容と、改正による事業者への影響を解説します。
- 電子帳簿保存法の改正内容
電子帳簿保存法は、下記リンクの図表のとおり「電子帳簿等保存」や「スキャナ保存」、「電子取引」の3つに分かれており、各項目によって改正内容が異なります。
(出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/12.htm)
□電子帳簿等保存
従来は総勘定元帳や売掛帳などの帳簿書類を「電子帳簿」として保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、今回の改正によって事前承認が不要となりました。
また電子帳簿を「優良」と「その他」に分け、「その他」の帳簿については、検索機能や訂正等の履歴機能が不要となるなど、今回の改正によって要件が大幅に緩和されることとなります。
□スキャナ保存
先述した電子帳簿等保存と同様に、領収書等をスキャナでデータ化して保存する場合に関しても、税務署長の事前承認が不要となります。
またスキャナ保存を行う場合、3営業日以内にタイムスタンプを付与する必要がありましたが、今回の改正では最長で約2ヵ月以内となり、さらには訂正や削除履歴が残るクラウドに保存する場合にはタイムスタンプ自体が不要となります。
なおスキャナ保存したデータは、取引年月日や取引金額、取引先、勘定科目などの条件によって検索が可能であることが求められていましたが、改正後は「取引年月日」、「取引金額」、「取引先」の3つの検索項目に限定されています。
□電子取引
電子取引とは、Amazonや楽天などのネットサービスやキャッシュレス決済、または電子データ(PDFやエクセルなど)で受領する請求書や領収書を指します。
タイムスタンプに関して「スキャナ保存」と同様の改正がなされたのに加え、今回の改正では、電子取引の紙媒体での保存が不可となりました。
つまり改正後は、電子取引データは電子上での保存が義務化されることとなります。
- 改正による影響
2022年1月から適用される改正内容では、「電子帳簿等保存」や「スキャナ保存」の要件が大幅に緩和される一方で、「電子取引」については紙媒体での保存が不可とされており、“電子化を促進したい”という国の意向が読み取れます。
特に影響が大きいと考えられるのは「電子取引」に関する改正です。
日々の取引の中で、ネット通販やキャッシュレス決済、請求書等のデータ化など、電子取引の割合が年々増加していることでしょう。したがって社内の取引について、「すべてが紙媒体」あるいは「すべてが電子データ」である事業者よりも、双方が混在するケースが大半であると考えられます。
これまでは電子取引についても印刷し、すべて紙媒体として保存していた事業者も多いでしょうが、改正後は「電子取引」と「それ以外の取引」を区分して保存しなければなりません。
- 事業者が取り組むべき内容は?
今後も電子化を推進する流れはより一層強まることが予測されるため、それを踏まえた対応策の検討をお勧めします。
電子取引自体をやめることで改正の影響を回避するよりも、「電子帳簿等保存」や「スキャナ保存」についても導入し、社内の電子化を加速させる機会と捉えることも選択肢となります。
その場合にはタイムスタンプ機能や訂正履歴機能など、電子帳簿保存法の要件をきちんと満たしたシステムを選定しましょう。
(まとめ)
今回は2022年1月から適用される電子帳簿保存法の改正について解説しました。
これまで電子帳簿保存法とはあまり関わりのなかった事業者にとっても、今回の電子取引における改正点は大きな影響が及ぶ可能性があります。
改正内容を踏まえ、どのように対応すべきかしっかりと検討しましょう。